船の錨を指す言葉である「アンカー」を使っていることからもわかるように、キャリアアンカーとはキャリアの舵取りについて考える造語である。自分がどのような働き方がしたいの分からないまま、とりあえず転職することだけを決意して転職活動を進めてしまう転職者は少なくない。自身の専門性、創造性や競争心などを総合的に判断した上で、自分の内面を明らかにすることがキャリアアンカーの目的なのである。競争心があまり強くない転職者が成果主義の企業へ転職してもミスマッチになりやすく、創造性の高い人がルーチンワークに従事しても成果を上げづらい。キャリアアンカーを活用することで、そういうミスマッチを防ぐことができるのだ。そのため仕事を探す上で大切なキャリアアンカーについて知識を深め、それをもとに仕事を探すことが重要なのである。
また、こうしたキャリアアンカーは20代から始めるのではなく、30代以降に考えることが推奨されている。20代では経験不足であるため、キャリアについて考えたり適正を鑑みても正確な評価を導き出すことが難しいのだ。そのため、ある程度の経験を積み、転職において自分のスキルや経験を売りにしやすい30代こそがキャリアアンカーについて考える上で適しているのである。また、キャリアアンカーはあくまで考え方の一種であるため、特別な正解があるわけではない。自分の向き不向きや適正を考えることが目的であるため、8種に分かれているキャリアアンカーの分類のうちどれか一つが欠けているとしても、気落ちする必要はないのである。むしろ、欠けているものとそうでないものがあるということで、自分の向き不向きが明確にわかるため、転職先を探しやすいだろう。